江戸期各地で“観音めぐり”が盛んで当時は庶民の信仰を集めていました。大阪市内にも寛文(1661)頃つくられた“大坂三十三所観音巡り”があります。
近松門左衛門の世話浄瑠璃「曾根崎心中」の冒頭でも“お初の観音めぐり”が設定されお初が太融寺を起点として三十三ケ所の観音札所を順拝し、その功徳で成仏できたと結んでいます。
”西国三十三所巡り”同様の功徳があるうえ、一日で回れるという手軽さもあり“大坂三十三所巡り”は幅広く庶民にうけいれられました。
一方、郊外の寺は、戦国時代の兵火や天災などから甦り、幸運にも秘仏や国宝級の宝物が多数残っています。
ここでは古寺の縁起を辿り、いにしえの世界に巡礼できるように、身近な大阪郊外の寺の絵図などをご紹介します。
《縁起》 |
ここでいう【縁起】というのは、寺院、神社の草創・沿革またはその霊験などを記した文書・詞章のすべてをさします。まず寺院縁起を内容に則してならべると、造像記、開眼記荘厳記録、教典の内容来歴を解説したもの、開基住僧の伝記、法難殉教記、勧進帳などがあげられます。
現存する寺の縁起の最も古いものは、「元興寺伽藍縁起并流記資財帳」天平19年、「大安寺伽藍縁起并流記資材帳」で、それについで、「観心寺縁起實録帳」承和
4年、「長谷寺縁起文」寛平 8年、「興福寺縁起」昌泰3年などがあり、寺院の増加につれて縁起も多く作られ、また平安時代末期から鎌倉時代にわたって絵巻物が流行し、「信貴山縁起」、「誓願寺縁起」、「石山寺縁起」などは寺社の由来を描いたものですが、「華厳縁起」は高僧の伝記説話を絵巻物にしたものです。
略縁起は、簡単な縁起を記したもので、まれには何枚かの紙綴りになった小冊子もありますが、多くは一枚擦りで、簡単に捨てられてしまうという不幸な運命にありました。
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《展示資料リスト》
資料名 |
請求記号 |
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『和泉国犬鳴山全図』 |
枚 142 |
『和泉名所図絵』 |
378−14 |
『大阪三十三所観音巡り』 |
136−94 |
『河内国道明寺縁起』 |
136−176 |
『河内名所図絵』 |
378−700 |
『観心寺縁起實録帳』 |
136−94 |
『観音霊場順拝名所図絵』 |
136−104 |
『西国三十三所観音霊場記』 |
136−178 |
『西国三十三所観音霊場記図絵』 |
136−164 |
『西国三十三所図会』 |
136−120 |
『西国三十三所名所図会』 |
136− 22 |
『西国三十三所名所図会』 |
136−114 |
『西国二十三番摂州勝尾寺略縁起』 |
枚 101 |
『諸国社寺縁起』 |
朝日 136−1 |
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