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第55回大阪資料・古典籍室1小展示
平成15年8月19日(日)〜10月11日(土)


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描かれた古墳





第55回小展示外観


 古代に築造された高塚をなす墓-古墳は各地につくられたが、なかでも天皇皇后などを葬る山陵は、律令の時代には国家の管理の下にあって祭祀も行われ守護されていた。しかし時代が下るにつれて荒廃が進み、開墾されて田畑になったり所在がわからなくなってしまったものも少なくなかった。江戸時代中期、国学・勤皇思想の勃興を背景にようやく山陵にも関心が向けられるようになり、元禄時代には徳川幕府も山陵の調査や補修に着手し大和地方は奈良奉行に、摂津・河内・和泉は大坂城代に命じて、元禄山陵図と称される山陵ごとの図や由緒書を作成提出させた。山陵図はその後享保・文化・文政・安政・文久・明治の各年間にも作られ、また研究家や絵師の作った図やこれらの転写図なども存在する。
 今回の展示ではこれら山陵図の系統のものから名所図会も含め、中之島図書館が所蔵する資料の中からおもに江戸時代に描かれた古墳の絵図のいくつかを紹介し、当時の人々の目に映った古墳の姿を現在の測量図、写真などと比較してご覧いただけたらと考えている。






〈展示資料〉




景行天皇陵の図
1.景行天皇陵(渋谷向山古墳)第12代
   奈良県天理市

 「諸陵周垣成就記」  22-31ほか
  細井知慎(広沢)著
  天保6年序
  巻子本


神功皇后陵の図
2.神功皇后陵(五社神古墳)
   奈良県奈良市

 「御陵所考」  石崎375-5
  謙宜写本
  寛政3年


応神天皇陵の図
3.応神天皇陵(誉田山古墳)第15代
   大阪府羽曳野市

 「河内名所図会」巻3  378-20ほか
  秋里籬島(湘夕)著
  竹原信繁(春朝斎)画
  浪華 森本太助
  享和元年


仁徳天皇陵、反正天皇陵の図
4.仁徳天皇陵(大山古墳)第16代
   大阪府堺市
  反正天皇陵(田出井山古墳)第18代
   大阪府堺市

 「和泉名所図会」巻1  378-14ほか
  秋里籬島(湘夕)著
  竹原信繁(春朝斎)画
  浪華 高橋平助
  寛政8年


市辺皇子墓の図
5.市辺皇子墓
   滋賀県八日市市妙法寺町
 市辺皇子は17代履中天皇の長子。この墓は彦根藩の長野義言が市辺皇子墓と考定したもの。
 明治8年にはこれとは別に八日市市市辺町の古保志塚が皇子の墓に比定された。

 「市辺皇子山陵考」  石崎375-6ほか
  長野義言著 写本


牧野車塚古墳の図
6.牧野車塚古墳(小倉車塚古墳)
   大阪府枚方市

 「大阪府地誌」第16編河内国交野郡1   378-1162
  写本
  明治17年12月


雄略天皇陵の図
7.雄略天皇陵(高鷲丸山古墳)第21代
   大阪府羽曳野市

 「河内名所図会」巻4  378-20ほか
  秋里籬島(湘夕)著
  丹羽桃蹊画
  浪華 森本太助
  享和元年


継体天皇陵の図
8.継体天皇陵(太田茶臼山古墳)第26代
   大阪府茨木市

 「東摂陵墓図誌」  378-22
  写本


安閑天皇陵、宣化天皇陵の図
9.安閑天皇陵(高屋築山古墳)第27代
   大阪府羽曳野市
  宣化天皇陵(ミサンザイ古墳)第28代
   奈良県橿原市

 「諸陵図会」  石崎375-12
  写本


鬼の雪隠・俎の図
10.鬼の雪隠・俎(せっちん・まないた)
   奈良県高市郡明日香村
 欽明陵(平田梅山古墳)の陪冢(ばいちょう)ともいわれる。

 「大和名所図会」巻5  朝日371-137
  秋里籬島(湘夕)著
  竹原信繁(春朝斎)画
  浪華 高橋平助
  寛政3年


崇峻天皇陵の図
11.崇峻天皇陵 第32代
   奈良県桜井市

 「大和国中山陵絵図」  石崎375-7
  大神宗保著
  天明4年
  自筆本


推古天皇陵の図
12.推古天皇陵(山田高塚古墳)第33代
   大阪府南河内郡太子町

 「諸陵周垣成就記」第2  石崎375-2
  細井知慎(広沢)著
  写本


孝徳天皇陵の図
13.孝徳天皇陵(上ノ山古墳)第36代ほか
   大阪府南河内郡太子町

 「河内名所図会」巻2  378-20ほか
  秋里籬島(湘夕)著
  丹羽桃蹊画
  浪華 森本太助
  享和元年


斉明天皇陵の図
14.斉明(皇極)天皇陵(車木ケンノウ古墳)第37・35代
   奈良県高市郡高取町

 「諸陵周垣成就記」第1  石崎375-2
  細井知慎(広沢)著
  写本     


天智天皇陵の図
15.天智天皇陵(山科御廟野山古墳)第38代
   京都府京都市

 「歴帝陵」  石崎375-13
  写本


大織冠古廟の図
16.大織冠(たいしょくかん)古廟(将軍塚古墳)
   大阪府茨木市
 伝藤原鎌足墓。

 「摂津名所図会」巻5  378-26ほか
  秋里籬島(湘夕)著
  竹原信繁(春朝斎)画
  浪華 柳原喜兵衛
  寛政10年


天武・持統天皇合葬陵の図
17.天武・持統天皇合葬陵(野口皇ノ墓古墳)第40・41代
   奈良県高市郡明日香村

 「大和地方三十帝御陵絵図」  32-306
  巻子本


文武天皇陵の図
18.文武天皇陵(高松塚古墳)第42代
   奈良県高市郡明日香村
 元禄から安政年間は高松塚古墳が文武陵とされていたが、明治14年現陵(ジョウセン塚古墳)に変更された。

 「大和国帝王山陵」  朝日375-5
  写本




● 図版、測量図については次の資料より引用した。(当ページでは写真図版、測量図は省略)


 「前方後円墳集成」近畿編 近藤義郎編 山川出版社 平成4年  210.2-260N

 「古墳の航空大観」図版、陵墓図 末永雅雄著 学生社 昭和50年  に1-929

 「高松塚 壁画古墳」 橿原考古学研究所編 奈良県教育委員会・奈良県明日香村 昭和47年  む-263




〈参考文献〉



● 展示資料のほか近世の陵墓研究の代表的な著作、参考資料として次のようなものを所蔵している。


 「藺笠(いがさ)の志づく」 谷森善臣記 稿本  甲和-506

 「打墨縄」大和国之部 北浦定政著 霊亀亭蔵版 嘉永元年  375-2ほか

 「柏原聖蹟考」 津久井清影著 京都 林芳兵衛 文久3年  375-16

 「御陵鈔録」 星野長宣編 谷森善臣写 書入本  甲和-544

 「御陵所考」(「皇陵古図集成」第4巻) 末永雅雄編著 青潮社 昭和58年  375-199

 「山陵記(三帝山陵記)附御所炎上御造営記」 池田直祐著 写本 文化10・13年  朝日375-1

 「山陵考」 水島永政著 写本  朝日375-2

 「山陵考略」 山川正宣 写本   375-18

 「山陵志」 蒲生秀実(君平)著 刊本  375-22ほか

 「首註陵墓一隅抄」 津久井清影撰 嘉永7年序  375-4ほか

 「菅笠日記」 本居宣長著 大坂 伊丹屋善兵衛  223.6-134ほか

 「前王廟陵記」 松下見林著  375-30ほか

 「帝陵考」 豊田文三郎編 写本  甲和-449
  1 諸陵周垣成就記  細井知慎
  2 山陵図  長谷川守真
  3 御陵所考  御代々陵絵図
  4 薩日隈三州神陵図  白尾国柱
    増補参考山陵図考  中 盛彬
    皇子墓墳図  河辺玄同
    山陵考々異

 「廟陵記」(「皇陵古図集成」第8巻) 末永雅雄編著 青潮社 昭和57年  375-199

 「大和国古墳墓取調書」 秋山日出雄編 由良大和古代文化研究協会 昭和60年  327-3353

 「陵墓考」 水島永政撰 写本  375-24

 「歴代廟陵考補遺後案」 前田夏蔭 稿本  甲和-507



● 当展示を開催するにあたり、下記の文献等を参考にさせていただきました。(順不同)


 「国史大辞典」 吉川弘文館 昭和54〜平成9年  320.3-279

 「日本史大事典」 平凡社 平成4〜6年  210.03-19N

 「幕末・明治期の陵墓」 外池昇著 吉川弘文館 平成9年  288.4-201N

 「日本古代の陵墓」 堀田啓一著 吉川弘文館 平成13年  288.4-341N

 「『天皇陵』総覧」(歴史読本特別増刊・事典シリーズ) 新人物往来社 平成5年  288.4-110N

 「幕末の修陵について」(「書陵部紀要」第16号) 戸原純一著 宮内庁書陵部 昭和39年  雑-2260

 「元禄の山陵絵図 大阪府立中之島図書館蔵『大和地方三十帝御陵絵図』」(「日本考古学」第15号)
   伊藤純著 日本考古学協会 平成15年



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