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第37回大阪資料・古典籍室1小展示
平成12年9月1日(金)〜10月17日(火)


江戸の園芸





 昨今、ガ−デニングが人々の関心を集めブ−ムになっていますが、江戸時代も、大名から町民まで、幅広い層の人々が植物に深い関心をよせ、園芸文化が大きく花開きました。

 ウメ、サクラ、ツバキ、ボタンなどの花木類から、カラタチバナ、オモト、マツバランなどの葉物類、カエデ、キク、アサガオなど、さまざまな植物が人々の心をとらえ、愛玩の対象となり、また品種改良がされ新しい園芸品種が生み出されています。

 これらめずらしい園芸植物を多くの人達に紹介したのが、江戸時代に二百数十余も作成されたといわれる園芸書です。江戸時代に刊行された園芸書によって、これら江戸の花々を眺めてみたいと思います。




【展示資料】



『花壇綱目』3巻3冊 水野元勝著 享保元(1716)年刊         <832-26>

日本の園芸書の最初のもの。初版は、延宝9(1681)年刊。
各季節ごとに花の特徴と栽培法を記す。



『増補地錦抄』8巻8冊 伊藤伊兵衛(政武)著 宝永7(1710)年刊   <832-20>

『広益地錦抄』8巻8冊 伊藤伊兵衛(政武)著 享保4(1719)年刊   <832-18>

『地錦抄付録』4巻4冊 伊藤伊兵衛(政武)著 享保18(1733)年刊  <832-20>

元禄8(1695)年に、伊藤政武の父伊兵衛(三之丞)が、『花壇地錦抄』を刊行した。これは、草花類だけでなく、植木類も所載されており、わが国初の総合園芸書というべきものである。上記3書は、政武が、これに図をいれ、また、もれていた植物を補い刊行したものである。



『画本野山草』5巻5冊 橘保国画 [宝暦5(1755) 年刊]       <655-44>

花卉196品を図示し、随所に開花期や性状を挿入した絵手本。
明治16(1883)年には、長谷川貞信がこれに彩色したものが出版された。



『草木錦葉集』緒巻2巻前篇3巻後篇3巻8冊 水野忠暁著 文政12(1829)年刊   <655-8 >

斑入り等の奇品を精細な図写でまとめたもの。
江戸後期になると、花よりも、葉に並々ならぬ関心がもたれたようである。



『牡丹道知辺』2巻2冊 杉岡宗閑(梅陰軒)著  元禄12(1699) 年刊   < 832-16 >

牡丹の栽培法、実生法等を詳述。品種は名称のみ。



『菊経国字略解』5巻3冊 松平頼寛著 白上盛隆解 写         <832-30>

菊の雅趣、栽培法等を漢文で記述。初版は、宝暦5(1755) 年刊。



『桜品(怡顔斎桜品)』1冊 松岡玄達著 宝暦7(1757) 年刊      <658-18>

桜69品の図並びに解説。



『梅品』2巻2冊 松岡玄達著 宝暦10(1760)年刊            <658-22>

梅60余種の図並びに解説。 上巻 白梅類、下巻 紅梅類。



『怡顔斎蘭品』2巻2冊 松岡玄達著 明和9(1772) 年刊        <658-14>

蘭の文字をもつ草本、木本46品を抄出し、30を図写。



『橘品類考』前篇 1冊 潅河山人著 寛政9(1797) 年刊        <833-2 >

カラタチバナ70余品の名称を列記、内16品を図示し、特性と培養法を添える。



『あさがほ叢』初編 2巻2冊 四時庵形影著 文化14(1817) 年刊   <832-12>

変化朝顔の彩色図譜並びに栽培法の解説。上巻185種、下巻317種。



『都鄙秋興』[幸 良弼著 野村文紹画] 刊                 <832-36>

変化朝顔の彩色図譜、123図収載。初版は安政4(1857) 年刊。



『牽牛花写真』    写                              <832-4 >

変化朝顔の彩色図集。著者・成立年不明。



『古今紅葉譜』 2巻2冊 明治38(1905)年翻刻出版          <658-32>

楓の図集。著者・成立年不明。
『古今紅葉譜』の紅葉1 『古今紅葉譜』の紅葉2



【参考文献】


『江戸の園芸・平成のガ−デニング』 小笠原 亮著 小学館 1999年  <622.1-4N>

『江戸のガ−デニング』 青木宏一郎著 平凡社 1999年           <622.1-5N>

『江戸の園芸−自然と行楽文化』 青木宏一郎著 筑摩書房 1998年   <L71-144N>